2013年4月8日月曜日

王様は国を変えたいと思った



王様は、日に日に戦に疲れきってゆく国を変えたいと思った。




王様は、皆が平和に暮らすにはどうすればいいのかを来る日も来る日も考えた。



何故いまのような世界になってしまったのか。
何故、皆、争いをやめようとしないのか。
何故こんなに混沌としてしまったのか。



信じるものがないからだ、と王様は考えた。



信じるものが、皆、ばらばらすぎるのだ。だから、譲り合うことができないし、自分の価値を押し通そうとする。争いをなくすには、皆の心を一つにしなければならない。他のなにものすら信じることができなくても、それだけは拠り所にすることのできるようなものをつくろう。王様はそう決めた。






それからは、それをつくることにすべてを費やした。朝から晩までそのことばかり考えていたし、夢にみることさえあった。そして、目がさめれば、またつくりつづける。王様の情熱は強かった。



「王様が何かやっているらしいぞ」

「なんでも、それができれば、皆が幸せになれるらしい」

「そりゃあいい。ぜひ完成を見てみたいね」



人望のあった王様の元には、多くの者が集まり、計画は国をかけて行われた。そのためには、多くのお金と時間が必要だった。王様はあらゆる手段を使い、お金と時間を集め、国中の人間と共に、それをつくった。 






長い月日がたち、ついにそれは完成した。



「王様。ついに完成したのですね」

「ああ。その通りだ」



それはとても巨大で、うっとりするほど美しかった。



誰もがそれを見に来ては、涙を流し、心を平和にして帰って行くのだ。



いつしか争いごともなくなっていた。






王様は、多くの者に感謝されたが、そんな王様にも、死ぬ時はくる。王様は言った。



「私は国が平和になって嬉しい。どうか、この大きな仏を後世まで伝えてほしい。ずっとこのまま、残してほしいのだ」



まもなく王様は死んでしまったが、その言葉を受け取った家臣たちは、言われたとおり、それを代々伝えて行った。王様が作り上げたものは、古くなったり、壊れたりもしたが、そのたびにつくり直され、良く手入れされた。いつしか、それと同じようなものがとても多くの場所で見られるようになり、それが、今日の「大仏」と呼ばれるようになったのだ。






王様の意志は現在でも生きており、「大仏」は、人々に平和と幸せを与え続けている。



それを訪れた人々は、ただ、座禅を組むのだ。



「いくよー!はい、チーズ!



にっこりと笑い、ポーズをとって。





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